腸内細菌により代謝され、つくり出されるエクオールは女性ホルモン・エストロゲンと同じ作用を持つと言われています。
その効果がよく知られるのは、更年期症状や更年期障害の緩和ですが、メタボ対策にも効果がある、と言われているのは意外に知られていないのではないでしょうか?
メタボリックシンドロームとは、高血圧、脂質異常(高LDLコレステロール)、高血糖の3つ、そして肥満が重なって起こることで、動脈硬化のリスクが高まるとされる病気の予備軍を言います。
女性ホルモン・エストロゲンは血管をしなやかに保ち、動脈硬化の予防や内臓脂肪の分解をしやすくする働きなどがあり、このエストロゲンに守られて女性は男性よりも生活習慣病の発症が抑えられています。
そのため閉経を迎えた女性はエストロゲンが減少することで、メタボが急激に起こりやすくなります。なんと閉経後の女性は男性よりもエストロゲンの量が減ってしまうそうですよ!
そこで女性の強い味方となるのがエクオールです。
エストロゲンと同様の働きを持つエクオールは、LDLコレステロールを減らし、動脈硬化や糖尿病のリスクを示すHbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)という指標によい影響を与える、という研究結果が報告されています。
今回はなぜエクオールがメタボを改善し、糖尿病・動脈硬化・LDLコレステロールの値を改善する効果があるのかをご紹介しています。
エクオールと糖尿病
糖尿病とは、血糖値が高い状態です。空腹時に血糖値126以上、もしくはHbA1c値が6.5%以上の状態を指します。
糖尿病になる前の境界型糖尿病だと無症状ですが、進行するとのどが渇く、トイレが近くなる、などの症状が出はじめます。
高血糖状態を放置しておくと怖いのが、糖尿病特有の合併症である、神経症・網膜症・腎症を起こしてしまうこと。
エストロゲンには血糖値を下げるインスリンの働きを助ける作用があります。
ところが更年期にエストロゲンが減少し、血糖値が下がりにくくなると、糖尿病のリスクが高まります。
そこでエストロゲンと同じ作用を持つエクオールを摂取すると、血糖値を下げる働きをし、糖尿病のリスクを示すHbA1cの数値が下がった、という研究報告がされています。
女性の健康とメノポーズ協会が発行する冊子では、エクオールを12週間摂取したのちの、HbA1c値の推移が報告されています。
青いグラフはプラセボ(偽薬)で、緑色のグラフがエクオールです。
エクオールを摂取したことで、HbA1c値が大幅に下がっていることがわかりますね。
エクオールと動脈硬化
動脈硬化とは、心臓から全身に血液を送り込む役割を担う動脈の内壁が肥厚し、硬化した状態を指して動脈硬化と呼びます。
動脈がかたくなると、血管のしなやかさが失われるため血液をうまく送り出せず、心臓に負担がかかります。
また血管の内側がもろくなったり、狭くなったり、つまりやすくなるため、必要な酸素や栄養がいきわたらず、臓器や組織が正常に機能しなくなったり、血管がつまって破裂すると心筋梗塞や脳梗塞、脳出血といった深刻な病気の原因につながります。
エクオールは動脈硬化の予防にも効果的です。
2017年の滋賀医科大学の研究チームによる研究成果を見つけました。
無作為に抽出された心血管病の既往歴がない男性272名を調査の対象とし、血中に含まれるエクオール濃度でエクオール産生者とエクオール非産生者*とにわけ調査したところ、エクオール産生者は非産生者と比較して心臓血管に動脈硬化を有する危険度が低い、とうことがわかったそうです。
この研究では被験者が男性ではありますが、男女を問わずエクオールが動脈硬化の予防に効果が見込める、ということがわかりますね。
滋賀医科大学の研究グラフによれば、エクオールを作れる人の動脈硬化の危険度は、エクオールを作れない人の約10分の1である、ということが示されています。
参考リンク
大豆イソフラボン代謝物エクオール(equol)は潜在性動脈硬化と関連する-ERA JUMP研究より-
*エクオールは2人に1人が体内でつくり出すことができない、と言われています。
エクオールとLDLコレステロール
コレステロールとは、脂質(あぶら)の一種です。
脂質にはコレステロールのほか、中性脂肪、リン脂質、脂肪酸などがあり、それぞれ血液に乗って体の必要な部位に届けられています。
そのなかでもコレステロールは全身の細胞膜やステロイドホルモン(男性ホルモン、女性ホルモン、副腎皮質ホルモンが含まれる)、胆汁酸などの材料として、重要な役割を果たしています。
コレステロールはLDLとHDLに分類され、簡単に言えば、LDLコレステロールは運送トラックのように全身にコレステロールを供給し、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収する役割を果たします。
LDLとHDL、相互のバランスが大切で、バランスが崩れると血管内にコレステロールが蓄積して血管を傷つけたり、血管の内側を狭める原因となります。
LDLコレステロールが一般的に悪玉コレステロールと呼ばれるのはこのためです。
血液中のLDLコレステロールが多くなり過ぎた状態、または、HDLコレステロールが少なくなり過ぎた状態は動脈硬化のサインといえます。
またコレステロールと同じく脂質のひとつである中性脂肪・TGも、多すぎると動脈硬化のリスクを高めるといわれています。
日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール、HDLコレステロール、TGなどの基準値を定めていて、ひとつでも基準値から外れていると「脂質異常症」と診断されます。
特にLDLコレステロールとTGの両方が高い人は、動脈硬化のリスクが高いといわれています。
冒頭でも述べたように女性ホルモン・エストロゲンには血管をしなやかに保ち、動脈硬化の予防や内臓脂肪の分解をしやすくする働きなどがあります。
女性が閉経を迎え、急激にエストロゲンが減少した時に、女性ホルモンの働きを補えるのがエクオールなのです。
上の表は女性の健康とメノポーズ協会が、12週間のエクオールの摂取後、LDLコレステロールがどのように変化したかを調べたものです。
青いグラフはプラセボ(偽薬)で、緑のグラフがエクオールです。
12週間に渡って、1日当たり10㎎のエクオールを摂取したことで、LDLコレステロールが大幅に下がったことが示されています。
食事や生活習慣が変わっていないのに、コレステロールの数値が上がったり、体重の増加やスタイルの変化を感じたら、エストロゲンの減少を疑ってみることも大切です。
女性ホルモンの減少は、更年期症状や障害のリスクだけではなく、肥満やメタボリックシンドロームに陥る可能性もはらんでいます。
放っておいて大病を患うことのないように、日々体の変化には敏感になっておきたいですね。
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